会長挨拶
日本楽譜出版協会は日本を代表する楽譜出版社の大半が加盟する業界団体です。楽譜出版社は作曲された作品を音楽表現の手段としてプロ、アマ、教育者を問わず楽器を演奏する演奏者に向けて出版し流通させる事業をしております。
楽譜には音楽として実際に演奏するために欠かせない表記手段としての目的以外に広く音楽を伝達する手段としての目的や後世に音楽を残すという使命もあります。何世紀にもわたって名曲が今に甦るのはまさに楽譜があるからと言えます。演奏形態に合わせた作品を編曲し出版することで音楽は演奏形態を超えてあらゆる楽器構成で演奏として再現できるのも、楽譜が演奏家のニーズに応えることで音楽の感動や魅力を伝えていくことができる素晴らしいところです。
紀元前3世紀には既に宗教音楽の楽譜が発見されています、もちろん近代印刷技術の開発により1500年代から楽譜印刷による出版社の活動が始まっております。
19世紀初頭までは音楽産業といえば楽譜出版であり、蓄音機が開発されるまでは楽譜が音楽産業の主役でした。
日本においても明治8年には法律によって楽譜版権が保護されているという記録があります、つまり日本でもレコード産業が出現するまでは楽譜出版が音楽業界の主役でした!
現在の音楽産業の主役はもはや楽譜出版ではありませんが、音楽を演奏者に伝え音楽を表現し広く伝える手段としての楽譜の役割や重要性はいまでも不変です。
最新の楽譜出版事業環境としては、PCによる楽譜制作ソフトが発達して、作曲家や編曲家が作った譜面がPCソフトで印刷版下やマスターになる時代になってきました。
このようなPC版下が印刷原版となったり、配信マスターとなって楽譜集として印刷されたり、場合によってはネット配信されたりするようになってきました。
楽譜は古代から近代まで音楽の記録や演奏のために連綿として継続しており、世界の音楽文化の発展や普及に大きく貢献してきました。
楽譜出版産業は印刷出版テクノロジーと流通システムによる印刷複製時代の成熟と低迷から厳しい経営環境にありましたが、今このような環境から脱出できる新しいムーブメントを迎えつつあります。
現代の楽譜出版社の新たな成長への転換点として、インターネット革命がデジタル社会及びネットワーク社会の著しい変革と成熟に大きな変化をもたらしています。
新しい時代の楽譜出版は印刷複製時代とは異なる形態の事業基盤を利用していくことになります。デジタル時代の楽譜出版事業基盤の整備が進み、楽譜事業環境としては①印刷による流通モデル、②電子出版による電子デバイスへの流通モデル、③プリントオンデマンドによる少部数出版流通モデルなどの各種ハイブリット出版事業基盤が整備されてきております。
音楽市場はグローバルに進化しており、楽譜を必要とする顧客や市場にジャストインタイムで直接提供するテクノロジーをもとに効率よく提供する手段を楽譜出版社は獲得しております。楽譜事業の推進において経営効率のうえで最適化した、出版プラットフォームの選択で音楽を演奏する楽譜ニーズに応えるもっとも効果的な事業モデルをいろいろと選択できるようになりました。
日本楽譜出版協会では日本の音楽文化と音楽産業を担う楽譜出版社が多数加盟しており、音楽の普及や保護そして市場の拡大にこれからも貢献いたします。 楽譜出版社及びに日本楽譜出版協会の活動に引き続きご支援ご指導賜りますようお願い申し上げます。
一般社団法人 日本楽譜出版協会
会長 佐々木 隆一
理事長挨拶
先般行われました2019年度定時社員総会におきまして理事長を拝命いたしました。守備範囲が広く安定感を持つ、前理事長の後任として、非力ではありますが、その役割を果たして参りたいと思います。
さて、今回の総会の折にも申し上げましたが、33年目を迎える日本楽譜出版協会の歴史の中でも、この10年間は、インターネットと情報技術の発展に伴う社会の変革など、この外部環境の変化に符合するように、私たち業界の中でも、各社の事業方針さえ変わるほど大きく揺れ動いた10年間だったのではないでしょうか?
今後も続くであろう環境の変化とそのインパクトは、恐らく各社それぞれの「価値観」の多様化にも繋がり、協会内でも様々なパターンとして混在していくものと考えられます。不透明で困難な時代だからこそ、先ずは会員各社それぞれの社業におけるパフォーマンス向上を目指して頂きつつ、当協会活動におきましては、当面の課題である著作物の教育利用に関する著作権法35条改正に関する対応、そして、この業界が抱えるさまざまな問題点の認識と課題を把握しながら解決に向けての安定した、かつ発展に繋がる取り組みが日本楽譜出版協会の大きな役割であると考えております。
理事・監事を代表致しまして、改めて会員各社の皆さまにはご指導・ご協力をお願いいたします。
一般社団法人 日本楽譜出版協会
理事長 下條 俊幸